エッセイ「心の残像」ESSAY

プリマ開発者中谷光伸コラム

第二夜 -白紙-

昨晩こんな夢を見ました。 木造の古い校舎に僕はいる。教室の中には机が並べられ、小さな木の椅子に僕は腰掛けている。机の上には紙が幾枚かあり、そこに印刷された掠れかけた文字を読んでは、僕は所々にある空欄に何か書き込もうとしている。どうやら、試験を受けているようだ。僕と同じような子供が何人もいて、同じように試験を受けている。涼しげな顔で鉛筆を走らせる子供もいれば、頭を抱えて考え込んでいる子供もいる。時折、その一人が席を立っては、教壇にいる試験官らしき男に答案を提出し、教室を出て行く。

僕は何度も問題を読み返しては、その答えを考えていた。けれども、答えが分からない。考えれば、考えるほどに、分からなくなり、焦れば焦るほどに、問題の意味すら分からなくなった。それでも、僕は問題を解こうとしている。また、一人の子供が席を立ち、教室を出て行く。そして、また一人。気が付くと、教室で試験を受けているのは僕一人になってしまった。教壇では試験官が黙って僕が答案を提出するのを待っていた。何とか一問でも解こうとしたが、結局、ひとつの答えも書けないうちに、試験官が僕を見て、
「試験時間が終わりました」と言う。それで、僕は仕方なく席を立ち、白紙の答案用紙を彼に提出すると、受け取った紙にさっと目を通し、
「あなたは満点ですね」と彼は言う。僕は不思議に思い、
「どうしてですか」と尋ねると、
「あなたの答えには間違ったところがありませんから」と言うと、彼は微笑んで、束になった答案用紙の上に僕の白紙の答案用紙を重ね、それを持って教室を出て行った。